オーディオのイベントとして東京ではヘッドホン祭り、大阪ではポタフェスがあったここ最近ですが、注目は何だったでしょうか?
HIFIMANのヘッドホン「SHANGRI-LA」はインパクト大でしたかね、なにせ594万円(5万ドル)ということですし。。。
一体誰が買うんですかね、1人用ですよ、これ(笑)
さて、このSHANGRI-LAにしても今回が初お目見えというわけではありませんでした。
これから紹介するイヤホンもこのたび、正式受注が開始されたのです。
2016年10月、モニター販売が2日間だけ実施されたというオーダーメイド型イヤホン、カスタム・イン・イヤー・モニター(CIEM)です。
モニター販売価格は29万円で、ケーブルは別途購入が必要という異色のイヤホン。
このハードルの高さ故、手に入れた人も少なく、評価も少ないのが現実です。
正式受注価格は約30万円(フジヤエービックさんの価格で、実際はオープン価格です)となり、ここでもケーブルは付属しません。
価格も価格なだけに、注文したくても先にどのようなイヤホンか、少しでも情報が欲しいところでしょう。
この記事ではTITANに手を出そうと思っている人に向けて、少しでも力になれたら幸いです。
(とはいえ、音響評価のプロというわけでもないので、あくまで参考程度にしていただければと思います。)
■ 外観
表面は光沢のブラック、内面は鉛のような色の鏡面仕上げでメタルスライムのようです。
イヤホンのスペックについてはあまり情報はありませんが、BAドライバとFOSTEX製の9mmダイナミックドライバを使用したハイブリッド型(詳細は非公開)CIEMで、シェルは名前の通りチタンでできています。FitEarさんのイヤホンでハイブリッド型と言えばAirという種類もありますが、これとは設計は異なるとのことです。またチタンでできているということで、寒いところでは良く冷えます。公式でも懐で一度温めてから装着するようにとアナウンスされているだけのことはあります。冬場の使用では低温やけどしないように注意が必要です。
またこのTITANに採用されているチタンシェルはダイナミックドライバの音質に与える影響は大きいということです。
元々スピーカーなどはいかに振動とうまく付き合うかで音の良し悪しが決まってきます。そのために比重の大きい金属を用いるというのは音質改善には理にかなっているというわけです。
では、一体どれくらい重たいのでしょうか? 測定してみました。
比較は同じCIEMのUltimate EarsのUE18Proで行います。
上がFitEar TITAN、下がUE18Proです。ざっくり一般的なCIEMの約4倍という質量です。
初めて装着した時の感想は、「すぐ落ちるんじゃない?」と言ってしまうほどずっしり来ます。
しかし、そこはさすがはCIEMですね、落ちません(笑)
■音質
ケーブルにはリファレンスケーブルであるCable009を、プレーヤーにはAK380を使用しました。
まず最初に感じるのは、少し軽いか? 良く言えば聴きやすく、悪く言えばシャカシャカとあまり高いイヤホンな感じがしない音です。
が、それも最初だけ。
プレーヤーが温まって来るからなのか、イヤホンが温まってくるからなのか、当然エイジングも必要ですが、5分も使っていると低音にも高音にも一層の伸びと迫力が出てきます。ものすごく元気のある音です。特に高音の伸びはすさまじく全体的にもクリアで、高級ヘッドホンで音を聴いているかのようです。
逆に高音は元気がありすぎて、ケーブル交換かイコライザ操作で高音域を制御した方が良いという人もいるやもしれません。
少なくともCable009ではそんな感じです。BriseAudioさんのリケーブルを試聴させていただいたときは、高音も大人びた音となり、それでいてなかなか重みのある感じになったという感想を持ちました。
Cable009を使用しているの影響かもしれませんが、AK380単体ではTITANの本領を発揮できていない気がします。
つまるところ、TITANを完璧に鳴らしきるにはプレーヤー側にもパワーが必要です。
普通に使う分には特には考える必要はないレベルだとは思いますが、余裕をもって音を鳴らしたい場合は、ポータブルアンプの使用も視野に入れる必要が出てくると思われます。
■遮音性
CIEMと言えば、圧倒的な遮音性があります。
ノイズキャンセル? そんなものは鼻で笑うことのできる程度のものに成り下がるでしょう。
むしろCIEMで音楽を聴きながら散歩するということが危険な行為にすらなることも。。。
もちろんこのTITANも相当な遮音性があります。
しかし「圧倒的か?」と言われると少し首を傾げてしまいます。
もちろん普通のイヤホンよりは遮音性は上ですし、ノイズキャンセリングとも比較にはならないものの、UE18Proと比較すると後塵を拝します。
それは、当然インプレッション(耳型)の取り方にもよるところはあるでしょうが、ダイナミックドライバを採用する宿命ともいうべき、「ショートレッグ」というデザインが採用されていることにあります。
ダイナミックドライバは音を発生させる際に据え置きスピーカーと同様の振動が発生し、その時に耳の中の気圧を変化させてしまいます。
ショートレッグデザインはこの気圧変化を最小限に抑えるという役目を担うために、UE18Proのように鼓膜の近くまでノズルが伸びているタイプに比べると遮音性は劣ってしまうのです。
しかし、誤解なさらぬよう。
普通のイヤホンよりは遮音性は明らかに高いです!
■まとめ
値段が高い、ケーブル別売り、プレーヤーパワーが必要、さらには寒いところではいったん温めなければならないと、ハードルが高いことこの上なしなCIEMですが、音は元気いっぱい、またケーブル別売りというあたり、初めてその音を聞くまでいろいろ構想を巡らせ続けられる、とてもとても楽しいイヤホンです。
JH AudioやUniqueMelodyなどが販売する強力なCIEMもある中、FitEar TITANは日本発のフラグシップイヤホンだ、間違いない!