壊れたUE18proがメーカーから帰ってきました。
修理不可。
もう絶望です。。。
かと思いきや、どうやら希望があるようです。
神戸に行く必要があるようですが・・・
さて、前回。
限りなく低予算でテクニクスEAH-T700向けのリケーブルを自作してみました。
(第1回)Technics EAH-T700用リケーブルを作る ~準備編~
(第2回)Technics EAH-T700用リケーブルを作る ~試作編~
けれどもこれは割とガチなスピーカーケーブルをヘッドホンリケーブルに転用する”試作”。
ここからが本番です。
今回、本番ということで、使用するスピーカーケーブルはこちら。
KIMBER KABLE 8TC (2m)。
プラス(ホット)とマイナス(コールド)を8本ずつ、計16本のケーブルが編んで作られているキンバーの中でも上位のスピーカーケーブルです。
このケーブルを選んだきっかけは、ただの一目ぼれです(笑)
とにかく見た目の美しさ、そして見た目の迫力。
その存在感は半端ないものです。
ソニーから販売されているヘッドホンリケーブルもキンバーの物ですが、あんなもん、はっきり言って比になりません。
まぁあれでも装着していれば普通の人から見ると十分な存在感はあるようですが・・・
プラグはFURUTECHのロジウムメッキプラグ、FT-735SM(R)を2個、FT-763SM(R)を1個用意、あと8TCの太さに対応する熱圧着チューブを用意しました。
ここまででの費用は約27,000円です。
さて、まずやることは、右ユニット用に用いるケーブルと左ユニット用に用いるケーブルを分けることです。
コールド側は適当に仕分けて問題ないところですが、ホット側は8本ある中から4本ずつに分けます。
これを両端で実施し、右用と左用を混在させないように正確にマスキングテープでマーキングしていきます。
次に片側の16編みを約40cm分ほどきます。
さて、ここからが問題です。
ほどいたのはいいものの、ここから右用と左用を編んでいくのですが、ただツイストさせればいいというわけではありません。そんなことするとこのケーブルから美しさが損なわれてしまいます。。。
なので、『8つ編み』します。
というわけで、手芸のお勉強を経まして、スピーカーケーブルの8つ編みに挑戦していきます。
手芸における8つ編みとは異なり、裏表という概念が存在せず、正に8本の独立したケーブルを編み合わせていくため、困難を伴いました。編み方を間違えたり、次はどのケーブルを編むんだったか順番を忘れたりすると、全部ほどいて最初からやり直しです。。。
それでも、ケーブルの配色的な編み方など、試行錯誤の末なんとかいい感じに編み始めることができました。
右・左両方8つ編みを終え、被覆を剥きます。
ここで問題なのが、ケーブルの太さです。
若干5mmを上回るケーブル径で、今回用意したプラグが許容するケーブル径を超えています。
このままではプラグのハウジングがケーブルを通りません。
というわけで、ハウジングが邪魔にならずにプラグが半田付けできるギリギリのところまで被覆を剥き、ハウジングがケーブルを通るようになったところでホット・コールドごとにツイストさせます。
予備半田を施し、ホットとコールドが短絡しないように熱圧着チューブを巻きます。
ここからハウジングを通すのですが・・・
熱圧着チューブが邪魔でハウジングが通らないことが発覚 orz
別の手を考えることになりました。
次に考えた手は、まずコールドのみ被覆を剥きます。
ホット側は被覆を残すので絶縁状態ではあったのですが、ハウジングを締めた後に銅線むき出しを避けるためにチューブをします。
ハウジングを通し― (もうぱっつんぱっつんですね)
太いケーブルと思いながら格闘しつつ、頑張って半田付けをし―
ようやく片側が完成しました!
・・・が、なんか見た目が。。。
せっかく編んであるのが特徴なのに、付け根だけストレートというのはいただけません。
というわけで、一度解体します。
と、ここで、強引な施工がプラグ強度の限界を超えてしまったようで、壊れてしまいました・・・
そこそこ高いプラグ故、ショックを隠せません。
ケーブルが太いことも去ることながら、このプラグ、半田が乗りにくくてすごく作業が難しいのです。
でも、難しさの全ての原因はこのケーブルの太さ。
6.3mmのプラグで作成して、3.5mmへの変換プラグを使用するという案も考えましたが、いろいろ本末転倒な気がして、意地でもこのプラグでの完成を目指します。
プラグを壊してしまったので、慎重に第3案を考えます。と言っても、相当試行錯誤を繰り返していますが。
基本的にケーブル径がプラグが許容するサイズを圧倒的にオーバーしていて、そんななか、強引にR側への半田付けが必要となる作業です。
L側への半田付けはさほど難しくはないのですが、このR側への作業が難易度をグンと引き上げていることは間違いありません。
そこで、ひらめきました!
T700用ケーブルの特徴として、ヘッドホン側のケーブルではグランドを使わず、LとRだけへの接続だけで成立しています。つまり、一番くっつけるのが容易なグランドはフリーなのです。これを使わない手はありません。
R部分をグランド部分と短絡させ、ケーブルをグランドと半田付けで接続する方法を考えました。
R部分とグランド部分の短絡には銅線を巻きつける方法を考えましたが、コイル化して変な電磁波が発生しても嫌なので、銅線を塊にしてRとグランドの隙間に埋め込み、さらに半田付けで固定します。
歴戦の傷ですね。。。 2個目の破損も時間の問題のようです。
ケーブルの加工も少し変え、被覆はホット・コールドの両方、どちらか(今回はホット側)の被覆は少しだけ長めに剥きます。
ホット側に熱圧着チューブ(φ2を使用)、そして全体を覆うようにさらに熱圧着チューブ(φ5を使用)をかぶせ、火であぶって圧着します。
ギリギリのところでハウジングが通るので、ハウジングを通し、プラグを半田付けします。
しかし、やはりここでもケーブルの太さが立ちふさがりま・・・・・・せん!
ここで立ちふさがったのは、このプラグの半田付けのしにくさです。
ネットで調べても半田付けがやりにくいという感想が多く見かけられるこのFURUTECHのロジウムプラグ。
コールド側の半田付けは予備半田をたっぷりプラグに施してなんとかなっていましたが、他の部分については半田がうまくプラグに付かず、試行錯誤しているうちにプラグの温度が超高温となり、熱圧着チューブが裂けてホットとコールドが短絡し、さらに端子の絶縁部が溶けだし、使い物にならなくなる。。。
こうして2個目のプラグが壊れました。。。
次の課題は、いかに一瞬で半田付けができるかというところです。
この課題は半田が難しいとされるこのプラグに対しては非常に解決が困難だと思われました。
身近に半田付けを教えてくれる人はほとんどいなかったのですが、偶然、今会社での案件でかかわっている人から半田ごての先端部分が持つ熱容量について教えてくれた人がいて、先端が平たくなっているものに変えると一瞬で熱が伝わると教えてもらいましたが・・・
結果は失敗。
失敗の要因は熱圧着チューブがこの熱量に耐えられないこと。
この結果から、結局何をしても成功の可能性低いということなのか・・・
しかし、ここはいろいろ原理を逆手に取っていきます。
半田ごての先端というのは、熱管理が甘いと半田が玉になってうまく半田付けができないと一般的に言われています。(←そうだったのかぁー)
先端が平たくなっているものを使用したとき、半田は先端に巻きつくようになったので、これは半田付けがうまくいきやすいパターンだったのですが、先ほどの通り、熱圧着チューブがこの先端がプラグ側に伝える熱量に耐えられず、裂けてしまう問題点がありました。
標準の先端部品を使った場合はというと、半田は先端で玉となりやすく、半田付けがやりにくい状況となっていましたが、プラグ側に十分な熱が伝わるのには多少時間がかかっていました。
そこで、半田ごては標準の先端を使用して、半田ごての先端に直接半田を当てます。
玉状の半田が先端にぷっくり出来上がるので、適当な大きさの玉になるまで半田を当て、そしてその球を半田付けしたい部分に塗りつけます。
するとどうでしょう?
いい感じに半田付けできたではありませんか!
ここまでくれば後はスムーズに進みます。
そして、半田付け終了です!
太さのギリギリ限界を攻めているので、熱圧着チューブは逆剥けみたいになっていますが、ここはさらに上から熱圧着チューブで覆います。
さらにLかRかが判断付くようにプラモ用の塗料をプラグに塗りました。
だいぶ様になったと思います。
さあ完成~~
・・・ではないのですよ。
まだアンプ側のプラグを付けないといけません。
ほどほどに長文になっているので巻いていきます。。。
アンプ側のケーブルは16本!
ホットのケーブル8本の被覆を剥き、4本ずつでツイストして熱圧着チューブを通します。
右と左を間違うとジ・エンドですが、ここら辺は最初にちゃんとマーキングしてあるので問題ありません。
コールドは8本まとめてツイストします。
そしてハウジングを通しますが、やはりプラグがデカいと加工は凄まじくやりやすい!
大きく困ることなく配線・半田、あとついでにホットボンドを施し、ハウジングを締めます。
と、いうことで~~~
完成でーす!!
装着イメージ。
試作品と同じ環境で早速、試聴しますよ~
(試聴環境:Marantz HD-DAC1 ソース:USBメモリ内のMP3)
おぉ?!
これは、すごい。
音には相当な余裕感があり、ワイドレンジでいて前に出て存在感を示すボーカルの声の生々しさは抜群。
音質はニュートラルで、音一つ一つの抜けが気持ちいい。
ただ、残念な点も。
ケーブルが太く、よって固く、ヘッドホン装着中はあまり動けない。
まぁ静かに聴く、ということであればあまり不都合がないけれどもね。
ただ、どうしても動いてしまうことはあります。
そうすると、ヘッドホンに刺さっているプラグがケーブルの重さに耐えられずに抜けてしまうという問題点もあるのだ。
標準ケーブルのようにねじ止めできればよかったのだが、さすがにそれは叶わないので、静かに落ち着いた状況で音楽を楽しむのがベストなケーブルとなりました。
壮絶な戦いでしたが、一応目的を達成することが出来ました♪
実用向けに4TCでもう1本作ってみるのはいいかもしれませんね。
その場合、ソニーのリケーブルとどう差別化するかが問題でしょうけれど。
それではまた、気が向いたときにT700用ケーブルを作りましょう。