アニメーション映画「GODZILLA 星を喰う者」を見てきました。
この映画はゴジラのアニメ劇場版として制作され、3部作の最後を飾る作品です。
第2作「決戦機動増殖都市」に登場したメカゴジラには驚きを隠しきれませんでしたので、今回登場するというギドラ(ゴジラシリーズでは一般的にキングギドラと呼ばれてきた存在)は果たしてどのような驚きを与えてくれるのか、良い意味も悪い意味も込めて期待していました。
感想としては、今回のアニメ版3部作の設定や世界観の中であれば、まぁこれはこれで良かったんじゃない? という感じですかね。
色々意見もある作品かとは思いますが、個人的には相当切なくて、主人公が最後に何を考えていたのかを想像すると涙が出てきそうになります(短かったですが同人活動では一応これでもシナリオライターでしたから。。。)が、そこはネタバレを多く含むのであまり多くは書かないことにします。
とりあえずこの映画は怪獣同士がドンパチやり合うような内容を期待して観るべきではありません。
それは第2作目を見ていればある程度覚悟はできうると思いますが、今作は第2作目以上に人間ドラマが主体の作品です。
かつてキングギドラが登場するゴジラ作品で、ドンパチやらなかった作品があったかと言われるとまぁ無いので、今回の作品もそういうのをやはり期待せずにはいられないところですが、これから観るという人には言っておきたい。
ドンパチ目当てなら、つまらんぞ!
さて感想、というか感じたところと考えを、なるべくネタバレを避けながら具体的に掘っていきたいと思います。
第1作では地球を追われた人間たちが力を合わせてゴジラを討伐するという(ドンパチ系)作品でしたが、第2作では人間と他の種族との考え方の違いによる作戦の失敗とその裏にある人間としての尊厳が描かれ、ドンパチと人間ドラマが半々で構成されているような作品でした。
今作では「ゴジラ」という究極の生命体に対し、主人公は「もう勝てない」と絶望を露わにするところから物語が始まっていき、最後には人間達が原始時代のような生活でもって生活を再スタートさせていくことになります。
冒頭で主人公が抱いていた絶望は、それまでゴジラに抱き続けてきた怒りや憎しみを凌駕するものだったに違いありません。結局ゴジラとギドラの戦闘が始まるまでこの絶望が消えることはなかったでしょう。
しかしギドラの存在は再び主人公を「人間として」突き動かしていくことになります。ゴジラとギドラの戦いは人間の在り方を問う戦いでもあったと思います。
最後のゴジラと主人公の対峙シーンは、1954年の初代ゴジラの最後のシーンを彷彿とさせるものでした。
再スタートを切る文明において、悲劇を繰り返さないため、そして憎しみから始まる歴史とならないように、そういう考えが主人公の中にあったように感じました。
ただやはり一番想像するところは、主人公のとった行動が果たして正しかったのか、というところです。(※ちょっとだけネタバレ入ります。。。)
悲劇を繰り返さないためとは言え、憎しみを終わらせるためとは言え、もうすぐ父親になる身で、パートナーでもない女性を連れて「負け」に行くことが果たして最善だったのか、というところです。
ここが私の思う切ない部分の核心であり、考えても答えは出ず、深追いすると涙が出てきそうになるのです。(←※注:ちょっと私、人より多少感受性豊かなだけです)
原住民族”フツア”の中に「恨み」というものに当たる言葉はなく、主人公が「負け」に行く理由も主人公はフツアに対して知らなくていいと言いましたが、主人公が「負け」に行ったことで、その辺りを理解してしまい、「恨み」が生まれるのではないか? そして歴史は繰り返してしまうんではないか? とか。(エンドロール後の映像を見る限りそんなことはなさそうではあるが。)
ゴジラを目の前にして主人公の顔が穏やかになった時、何を考えていたのだろう? 感謝? 謝罪? 別れ? とか。
物言わぬ幼馴染ユウコはこれで報われるのだろうか? とか。
あの後おそらく主人公はひどくバッシングされたでしょう。主人公を擁護する人はいるのかどうか。誰もいない? フツアの双子だけ? あるいは片方だけ? メカゴジラを嫌っていたフツア達は皆擁護してくれるかも? もしかすると察しの良いあの学者先生くらいは最後まで主人公の味方でいてくれるかな? とか。
残された母親は何を思うのだろう? テレパス能力で全てを悟って理解者となったのだろうか? とか。
人間とフツアは決別したのかな? とか。
考えれば考えるほど想像の域を出ず、切なさだけが積もっていくのです。
:
:
:
色々考えながら書いていると、映画を観た後のモヤモヤが晴れてきた気がしてきました(笑)
これくらいにしておきましょう。
特に最近のゴジラ作品は大変社会性の高い作品に仕上がっていると思います(次のハリウッド版ゴジラはどうか知りませんが)。
そこから何を感じ取るかでゴジラの楽しみ方は広がっていくと思います。
次のハリウッド版ゴジラにもそこのところを多少は期待したいところですね。